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2023.07.19

【事後レポート】 渋谷駅前エリアマネジメント協議会設立10周年記念トークセッション 「+FUN SESSION SHIBUYA ~What is “渋谷らしいまちづくり”?~」 (後編)

【事後レポート】 渋谷駅前エリアマネジメント協議会設立10周年記念トークセッション 「+FUN SESSION SHIBUYA ~What is “渋谷らしいまちづくり”?~」 (後編)

 渋谷駅前エリアマネジメント協議会は、設立10周年を記念したイベントを2023年5月30日(火)に渋谷駅東口地下広場イベントスペースにて開催しました。

 後編では、トークセッション第二部「都市とアート」、第三部のアイデアミーティングの様子についてレポートいたします。

・レポート前編はこちら

・ダイジェストムービーはこちら

 

【第二部】 「都市とアート」

 

 当法人では、「遊び心で渋谷を動かせ。」をコンセプトに、さまざまなアートプロジェクトを推進しています。

 第二部では、全国エリアマネジメントネットワーク様ご協力のもと、各都市で推進されているアートプロジェクトのご担当者様にお集まりいただき、アートを通じたまちづくりの魅力と可能性について語っていただきました。

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画像左より、当法人 吉田七海統、札幌駅前通まちづくり株式会社 赤坂文音氏、大丸有エリアマネジメント協会 中森葉月氏

 

●各都市の取組について 

 はじめに、ご登壇いただいた皆様が取り組まれてこられた事例をご紹介いただきました。

 

(1)札幌駅前通まちづくり株式会社(赤坂氏)

 道路空間の両脇に広場条例をかけ、年間2000件以上のイベントを開催している札幌駅前通り地下歩道空間(通称「チ・カ・ホ」)や季節を感じられる四季折々のイベントを実施している地上の札幌市北3条広場(通称「アカプラ」)など、札幌駅前通り地区の地上と地下を活用し、様々なイベント等を通じてまちづくり活動を実施。

 

【事例①】「Kuraché(クラシェ)」

 チ・カ・ホ開業当時から実施している北海道のクリエイターや生産者が直接販売するマルシェイベント。

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Photo by yixtape

 

【事例②】「Sapporo Parallel Museum」

 札幌駅前通のまちなかとウェブサイト上の2カ所同時にアート作品を展開。

 まちの回遊性を高めるとともに、世界中のどこからでもアクセス可能にするハイブリッドな展覧会として企画されました。

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©山下拓也「The Woodcuts from the bedroom」(大丸札幌店)

 

(2)大丸有エリアマネジメント協会(中森氏)

 大手町・丸の内・有楽町(大丸有)地区で活動するNPO法人大丸有エリアマネジメント協会(通称:リガーレ)。大丸有エリアは、約120haの範囲に約28万人の就労者が勤め、GDP約25%のいわゆる「ビジネス街」であり、その特徴を活かした様々な取組が推進されています。

 

【事例】「有楽町アートアーバニズムYAU」

 2022年2月に開始した、アーティストと一緒にまちづくりを行う実証パイロットプログラム。

 アーティストと街の交流からイノベーションを起こすため、パフォーミングアーツの稽古場やアートマネージャー等が利用できるコワーキングスペースなど、自由に使えるスタジオを設けています。

 

演出家兼ダンサーである倉田翠氏を演出・構成に据え、大丸有ワーカー13名と

ワークショップを通じて制作した演劇作品『今ここから、あなたのことが見える/見えない』

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Photo by Hajime kato

 

広告が入っていない時期、大丸有地区の賑わいや景観形成のために掲出する

ベースフラッグプロジェクト「POLYPHONIC REFLECTIONS」

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Photo by Hajime kato

 

(3)一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント(吉田)

 当協議会で関係者とまちづくりの方針をつくり、法人が運営する屋外広告物等の収入を活用してまちづくりに還元しています。もともと大規模な土木工事が予定されていた渋谷駅前だからこそ、仮囲いなどキャンバスになりうる場所を活用し、まちを明るくしていこうという取組が推進されてきました。

 

【事例①】パブリックアートプロジェクト「ENLIGHTEN」

 産官連携でスタートアップの育成を支援する、渋谷区と民間企業によるコンソーシアム「Shibuya Startup Deck」と連携し実施したパブリックアートプロジェクト。

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©Embedded Blue Inc

 

【事例②】「PLACEMAKING ART in SHIBUYA」

 「多様性」をテーマに渋谷の街づくり関係者、視覚障がい者、アーティストなど、様々なメンバーが参加したワークショップを通して生まれた作品を元に、仮囲いライブアートを実施し、点字ブロック、壁面を装飾。

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©TokyoDex、STREET ART LINE PROJECT実行委員会

 

●アートを通じたまちづくりの意義

 各都市様々な事例をご紹介いただきましたが、実際にアート施策を実施することで、どのような「まちにとってのいいこと」があるのでしょうか。

 

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 赤坂氏は、『イベントを通じてビルオーナーや地域の方々とコミュニケーションをとり関係性を構築してきた。それにより継続的に施策に取り組むことができ、新しい企画もその関係性を活用し実施することができた』と述べました。

 中森氏は、『コロナ禍を経て、まちを訪れる理由としての通勤が弱くなっている。自分にとっては関わりしろがないと感じる場所であっても、アートには「まちのひとにとっての居場所」として切り開く力があると感じる』と語り、『「ここに来れば面白いことあるかも」という期待感は、まちに人が来る理由になると感じている。』と事務局・吉田も同意しました。

 また、ワーカーも巻き込んだ大丸有の事例を挙げ、『まちの特性や文脈、発展の経緯を見たときに、大丸有はオフィス街として発展していった経緯があると思うが、アート施策を「働く場所として選ぶ理由」につなげたいという狙いはあったのか』と事務局・吉田が問うと、中森氏は『働く場所を探すときに、今後のプラスアルファの選択理由として「アート」が作用するのではないか』と期待を語りました。

 

●アート施策におけるチームメイキング

 では、各都市様々な想いや目的があるなかで、どうやってアーティストやキュレーターなど、企画推進チームを組んでいるのでしょうか。

 札幌の場合は、『これまでのいろんなイベントや事業で仲間づくりを大事にしてきたので、企画を重ねるたびに仲間を増やし、継続的に発展』してきたと赤坂氏が語りました。

 大丸有(「YAU」)の場合は、『いろんな作家の方を呼び込みたいので、「こういうカラーのあるまちだ」、「こんな資格がないといけない」と思われないようにしたかった。プロジェクトの初期の段階から、外部の運営メンバーと「このエリアでは、どういうことをアーティストに期待しているのか」といったまち側の想いを理解してもらうフェーズをしっかりと設け、そのうえで、アーティストなどチームづくりを進めていった』そうです。『「YAU」もゆくゆくは、まちのことも分かりつつ、アートのことも分かる内部組織としたい。』と中森氏は語りました。

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●課題や苦労したこと

 赤坂氏は、『限られた人数で通常業務に加えてアート施策を実施しているからこそ、いかに仲間を増やして運用していくか』、中森氏は、『事業を継続していくために、行政や地権者の方々と実施意義を共有すること、そのために、指標を設定しにくいアートというジャンルで、いかに客観的に取組の意義を「理解」さらには「参加」してもらえるようにできるか』を今後の課題として挙げました。それらのコメントを受け、『それぞれ重視している項目が異なるなかでの関係者との合意形成は、エリアマネジメント活動を行っているものとしては共通の課題』として事務局・吉田が共感しました。

 その解決策としてどういったことをされているのか問うと、赤坂氏は『鑑賞者だけでなく、準備段階から協力してくださっている方々へ説明する時間を設けるようにしている』こと、中森氏は、『来場者へのアンケートを始めているが、調査項目や分析方法は精査中。ほかにも、共通理解を得るために関係者の方々に実際に体験していただくワークショップを企画している』と答えました。

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●これから取り組んでいきたいこと

 それでは、今後はどういったことに取り組んでいきたいかという質問に対して、赤坂氏は、『チ・カ・ホが開業して10年以上たっているなかで、まちの様子が変わってきている。ワーカーの期待するまちの姿も変わってきている。そういった環境の変化を捉えながらどう発展させていくかを考え、企画に反映していきたい』と答えました。

 中森氏は、『音楽などこれまでと異なるジャンルに幅を広げて関わっていきたい。そうすることで、違う射程に刺さっていくのではないかと期待している。また、活動を継続していくための体制を整備していきたい』と想いを語りました。

 事務局・吉田が来街者にPOPに届くコンテンツとしての「音楽」の可能性について言及し、「絵」以外のアート展開についての今後の見通しを伺うと、赤坂氏は、『「Kuraché」の事例で一個人の出展者も参加できるように、市民も活動できる場をつくっていきたい』と述べ、中森氏は、『「アーティストという人そのものがいる強さ」を活かし、必ずしもリテラシーがなくとも、パフォーミングアーツなど「周囲の人を巻き込んでいく力を持った表現」を施策の一つとして組み込みながら実施したい』と語りました。

 最後、『まちに来て楽しいというイメージを形成していくのは、体験の積み重ねであり、「アートを通じた体験価値」を誰にリーチし、どうやって巻き込んでいくのか、その共創の在り方に「まちづくりという側面でのアートの意義」があるのではないか』と事務局・吉田が締めくくりました。

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【第三部】 渋谷回遊ツアーを考えるアイデアミーティング

 

NPO法人シブヤ大学と(一社)渋谷駅前エリアマネジメントが協同して2021年にスタートした「しぶやをつくるゼミ」。

渋谷のまちでこんなことができたらいいな、を本気で考えてきたゼミの卒業生たちが、ハチ公生誕100周年を記念し、渋谷回遊ツアーを企画する、アイデアミーティングを行いました。

 

 会場では、ゼミ生たちが複数のチームに分かれ、それぞれが想う「渋谷の魅力」を語り合いながら、マップに落としていきました。最後は、各チームごとに企画した渋谷回遊ツアーを発表。

 終電後の渋谷の特別感に着目したツアーや、商業施設のバックヤードなど普段行かないディープな渋谷のB面を周るツアー、特徴の異なるエリアの雰囲気をコース料理のように楽しむツアーや、老若男女それぞれの集まる場所を巡り多様性を感じるツアー、敢えて急勾配な坂など不便な場所を巡りその背景を知っていただくツアーといった、自由な発想が集まりました。

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会場の様子

 

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ファシリテーター 特定非営利活動法人シブヤ大学 深澤まどか氏

 

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参加者が伝えたい渋谷の魅力をマップにプロットし、チームごとに発表

 

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ゼミ1期生が企画した参加型企画「シブヤノイロ展」も会場に展示(詳細はこちら

 


■開催概要

タイトル:「+FUN SESSION SHIBUYA ~What is “渋谷らしいまちづくり”?~」

開催日:2023年5月30日(火)

開催時間:第一部(15:00~16:00)、第二部(17:00~18:00)、第三部(19:00~20:30)

       ※第一部、第二部のトークセッショアーカイブは、こちらよりご覧いただけます。

開催地:渋谷駅東口地下広場 イベントスペース

     (東京都渋谷区渋谷2丁目24 渋谷駅東口地下広場地下2F)

主 催:渋谷駅前エリアマネジメント協議会

協 賛:東急株式会社/東急不動産株式会社/独立行政法人都市再生機構

協 力:全国エリアマネジメントネットワーク

 

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