渋谷駅前エリアマネジメント協議会は、設立10周年を記念したイベントを2023年5月30日(火)に渋谷駅東口地下広場イベントスペースにて開催しました。
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開会にあたり、『協議会10周年という節目に、渋谷駅周辺のさらなる発展と魅力向上を目指し公民連携で育んできたこの東口地下広場を会場として、全国のエリアマネジメント関係者が集い未来を語る機会を設けることができた』ことを挙げながら、当法人 代表理事・坂井洋一郎は、『「10年に渡って様々な方に支えていただき活動を行ってきた」ことへの御礼、引き続き開発プロジェクトが進むなかでも「エリアマネジメント活動が渋谷のまちづくりの下支えとなっていければ」』と想いを伝えさせていただきました。
当法人 代表理事 坂井洋一郎
【第一部】 「渋谷のまちづくりのこれまでとこれから」
画像左より、当法人 事務局長 井上琢磨、渋谷区 まちづくり推進部長 奥野和宏氏、一般社団法人 渋谷未来デザイン アドバイザー 須藤憲郎氏、当法人 グループ長 角揚一郎
当協議会は、ビル事業者・土地区画整理事業共同施行者・国土交通省・東京都・渋谷区で構成され、屋外広告物の地域ルールづくりや駅周辺サイン基準の統一、駅中心地区への車両流入を軽減し歩きやすいまちとする駐車場ルールづくりや道路空間の維持管理、防災・防犯、環境対策など、2013年の設立から現在まで、渋谷のまちをより快適で安全・安心な場所にするための取組を行ってまいりました。
2015年には、渋谷の魅力を駅前から発信する「SHIBUYA +FUN PROJECT」の実施主体となる一般社団法人も設立し、「遊び心で渋谷を動かせ。」をコンセプトに、さまざまなプロジェクトを推進しています。
第一部では、渋谷区 まちづくり推進部長・奥野和宏氏、一般社団法人渋谷未来デザイン アドバイザー・須藤憲郎氏にもご登壇いただき、当法人の立ち上げからこれまでの10年間、官民連携で実施してきた取り組みを振り返るとともに、これからの渋谷像やエリアマネジメントができることとは何かを語り合いました。
●当協議会設立当初を振り返って
渋谷区の行政計画のなかで位置づけられ立ち上げられた当協議会ですが、当時渋谷区職員であった須藤氏は、『「何十年にも渡って地域の皆さんが活動しているなかで、さらに開発で新たにできる場所も含め公共空間をいい状態で維持していくためにはどうしたらいいか」を議論していました。学識や地域の方々との意見交換や海外視察の経験から見えてきた渋谷のエリアマネジメント組織が担っていくべきことは、あえて「渋谷らしさ」を一言にせず、「均質化されない都市」として、「計画的でないことも容認」しながら渋谷を発展させていくこと、そして、工事中の期間も情報を発信し続けることであった』と当時を振り返ります。
『工事の早い段階からエリアマネジメントを立ち上げなければならないという学識や東京都からの指摘があるなかで、工事中の仮囲いになぜわざわざお金をかけて装飾しなければならないのかという事業者の声も当時はありました。そんな中でも合意形成ができたのは、「行政側の担当者が短期で異動することなく、長く携わることができたこと」と「渋谷駅前エリアマネジメント事務局のメンバーが、エリアマネジメントの必要性を十分に理解し、事業者側の承諾にあたったこと」が大きかった』と奥野氏は語ります。
●まちの価値を高めていると感じる取組・困難であったこと
『会場となっている渋谷駅東口地下広場は、渋谷区や事業者、関係者と、「とりあえずここから始めてみよう」という共通のテーマとして、区の資金と民間が広場で稼いだ収益を使って広場をきれいにする仕組みづくりの土台ができた』と事務局・角が挙げますと、須藤氏は、『景観や機能面でも様々な知見が集まった場所でもある』と加えました。
『渋谷区から都市再生推進法人に認定され、都市再生整備計画による道路占用の特例をいただくという道路管理者からの多大なるお力添えを得て実施できた事例であり、公益性を高めた裏切らないまちづくりをしていかなければならない』と事務局・角は語りました。
須藤氏は、屋外広告物の運用について言及。『道路上や公園等もともと禁止区域となっている場所を上手く使い広告を出せるようにし、さらに、学識の先生も参加する審査組織を設けて広告のクオリティが渋谷に合うように運用できる仕組みをつくったことは渋谷駅前エリアマネジメントならではであり、それを今後より発展させていくべきだ』と述べました。
奥野氏は、渋谷駅前エリアマネジメントと行政が協力したからこそできた事例として、『駅前サインガイドラインの取り組み』を挙げました。この取り組みは、それまでバラバラにデザインされていたサインを、共通ルールをつくることで、分かりやすい統一的な公共サインを整備する試みであり、鉄道をはじめとした多数の関係者で足並みをそろえる必要がありました。
●開発が続く中での渋谷駅前エリアマネジメントによるまちづくり
今後10年20年と、駅中心地区として渋谷が変化していく中で、渋谷駅前エリアマネジメントが果たしていくべきこととは何かという問いかけに対し、須藤氏は、『「ウォーカブルシティ」を掲げるなかで、物理的な面だけでなく、「言葉のバリアフリー」を解決していかなければならないと感じている』と述べました。
奥野氏は、『設立当初からの課題ではあるが、様々なデベロッパーが開発を進めている中でエリアや活動内容を広げていく必要がある。』と述べ、これまでも活発に活動してきた商店街の方々も加え、プレイヤーが多い、渋谷らしいエリアマネジメント組織としていく姿を掲げました。
事務局・角は、『回遊する仕組みを作る』ことを挙げ、『駅からここまで広い範囲を回遊するまちは少ないなかで、力を合わせて回遊する仕組みを作り続ける、その機能の一つとしてエリアマネジメント活動が注目されている』と語り、最後、井上事務局長は、『渋谷駅東口地下広場で培ったスキームも活用しながら、広がっていく公共空間をどう一体的に運用していくか、そのスキルをどう上げていくかが我々としての課題であり、今後取り組んでいくべきことである』と、当協議会・当法人としての決意を述べました。
●今後渋谷駅前エリアマネジメントが伸ばしていくべきこと・期待していること
最後に、今後の渋谷駅前エリアマネジメントが伸ばしていくべきこと、期待していることについて、各登壇者にお話しいただきました。
須藤氏は、『「Z世代、α世代の人々のアイデアをもらうだけでなく、参加できる仕組みをつくっていくこと」、「お金を稼いでまちに還元できる事業を、渋谷区独自で屋外広告物条例を持てないなかでも、別の方法で突破できないか研究」していくこと」』を伸ばしていくべきこととして挙げ、 『渋谷は多様性のまち。すべての人に居場所があるようにしてほしい。そのために必要な制度の緩和については、地域の方々と共に検討を進めていってほしい。』と期待を寄せました。
奥野氏は、『「外部の団体や商店街と連携し面的にイベントを実施し、活動の範囲を広げていく」、また、それを通じて「渋谷駅前エリアマネジメントの活動を広く知ってもらうこと」』が重要だとし、そのためにも、『今後、行政の職員も事務局員として加わり、一緒に活動していくこと』をポイントとして挙げました。
それらを受け、事務局・角は、『より多くの人々に参加いただきながら、持続性公益性のある新しいルールをつくっていきたい』と答え、井上事務局長は、『人と人をつなげていくことは、エリアマネジメントの意義であり、今後もまちづくり団体と連携していき、更なる渋谷駅前エリアマネジメントの成長につなげてまちを盛上げていきたい』と決意を述べ締めくくりました。
■開催概要
タイトル:「+FUN SESSION SHIBUYA ~What is “渋谷らしいまちづくり”?~」
開催日:2023年5月30日(火)
開催時間:第一部(15:00~16:00)、第二部(17:00~18:00)、第三部(19:00~20:30)
※第一部、第二部のトークセッショアーカイブは、こちらよりご覧いただけます。
開催地:渋谷駅東口地下広場 イベントスペース
(東京都渋谷区渋谷2丁目24 渋谷駅東口地下広場地下2F)
主 催:渋谷駅前エリアマネジメント協議会
協 賛:東急株式会社/東急不動産株式会社/独立行政法人都市再生機構
協 力:全国エリアマネジメントネットワーク