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2024.03.28

アーティスト公募企画『TYPELESS』について語る~株式会社Embedded Blue 片岡さんを迎えて〜

アーティスト公募企画『TYPELESS』について語る~株式会社Embedded Blue 片岡さんを迎えて〜

株式会社Embedded Blue 片岡さん(左)と渋谷駅前エリアマネジメント 吉田(右)

 

 

株式会社Embedded Blue

代表取締役 片岡 奨さん

 

 

渋谷駅前エリアマネジメント(以下、渋谷エリマネ)は「持続的なまちづくり」を掲げ、渋谷駅中心五街区にてまちづくり活動を推進しています。

その一環として、アーティストが挑戦できる環境をつくること、再開発中から公共空間を豊かにすること、「人の心を楽しませ、人が歩きたくなる街」を実現することを目指し、まちびらきに向けた今年度、アーティスト公募企画「TYPELESS」を始動しました。

今回は、その「TYPELESS」の第一弾としてご参加いただいた株式会社Embedded Blue(以下、Embedded Blue)の片岡さんを迎えて、今回のプロジェクトへの思いや渋谷の街とアートについてお話を伺いました。

 

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渋谷エリマネ 吉田(以下、吉田):

渋谷駅前の落書き問題をアートの力で解決しよう!というテーマでアーティスト公募企画「TYPELESS」が始動し、その第一弾として今回は駅前の橋脚を対象にアート作品の募集を行いました。そこに公募いただいた、その経緯や思いなどをまずはお聞かせください。

 

Embedded Blue 片岡さん(以下、片岡さん):

まずは、「アート」というものをより多くの人の目に届くような取り組みをしていきたいという思いが元々ありました。アートがある景色や、生活の中にアートがある日常を日本でももっと広げていきたいですし、アーティストの活躍できる場作りをしてくださっている渋谷駅前エリアマネジメントさんの活動にはとても共感し、ぜひ、そこに参加したいという思いで手を挙げさせていただきました。

 

吉田:

共感いただけて嬉しいです。

都市の中でのアートの見せ方はさまざまな都市で取り組んでいますが、それぞれの都市がその中でアートと人の接点というものを考えています。渋谷という街には、元々ストリートアートというカルチャーがあり、街の景観の中に「絵」があるというのが渋谷らしい都市型アートだと思っています。今回のプロジェクトも街にとてもマッチするのではないでしょうか。

 

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片岡さん:

日本には、アートを入れるためのハードが諸外国に比べて圧倒的に少ないです。そういう中で、今回のように今あるものを作品に変えるという考え方は、まちづくりや都市計画において、とても重要だと思います。今回、舞台となった柱巻きも規制緩和など多くの方の尽力によって実現し、意義深いものだと思います。渋谷を訪れた人たちの視界の中にアート作品が入ることで、景観が変わって、印象的な風景になっています。渋谷は世界からの玄関口として、海外の方からも注目度の高い場所なので、景色が変わることで日本の印象も変化しますよね。

 

吉田:

そうですよね。あの場所の可能性というものを改めて感じます。多くの方があの場所を拠点にして街の中に入っていくので、多くの人の目に触れて渋谷だけでなく、東京や日本の印象が変わっていくというのはありますね。

今回は4名のアーティストの方に参加いただきましたが、どういったコンセプトでアーティストの方を選定されたのでしょうか。

 

片岡さん:

「渋谷」という場所性や空気感を意識しました。みんなが持っている「渋谷」という場所の印象に、どの様なアーティストのクリエイションがあるとより面白いのかと考えました。それは、あえて渋谷という街の印象から外していくという側面と、調和させていくという側面から考えました。そして、ただの風景として受け取ってもらうのではなく「なぜ、ここにアートがあるのだろうか」「そこにどんな作用を及ぼしているのだろう」ということを見ている人たちに問うている側面もあります。アーティスト各人がどうアートと向き合っているのか、アートを通じて社会とどう関わっていくのかなど、その一人ひとりのスタイルを汲み取った上で、アーティストを選定しました。

 

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吉田:

今回のタイトルは「YOU FEEL」ですが、それは今のお話の「見て・感じる」というところからなのでしょうか。

 

片岡さん:

「YOU FEEL」というと「あなたの感じるままに」と受け取る方も多いと思うのですが、どちらかと言うと感知する・認知するとか、その存在を意識すると言うようなイメージでタイトルをつけました。「公共空間にアートがある」「これを描いたアーティストがいる」などを考え、没入する、そのようなアティチュードを持ってもらえたら嬉しいです。

 

吉田:

確かに、そもそもそこに柱があるということ自体も、今回のアートが入って初めて認識した方も多いかもしれませんよね。

 

片岡さん:

そうなんですよね。「認識する」ということはとても大切なことだと考えています。例えば渋谷はダイバーシティな街と言われますが、「多様性」というテーマについてもすでに様々な議論やアクションが生まれています。アクションとしては、そこにあるということを認識する、違いがあることを知ることがスタートだと思っています。「存在している」ということに対峙して、考え始めるきっかけになればと「YOU FEEL」には社会に対するそんな投げかけも込められています。

 

吉田:

元々は、落書きだらけだった柱巻きにアートが入って、そういうメッセージを投げかけられるというのも渋谷にアートがある意味なのかもしれませんね。

 

片岡さん:

そうですね。柱巻きをキャンバスにするというのもとても面白い経験でした。360度の柱巻きに描いたので、立ち止まる場所ごとに作品が読み解けるように、様々な角度から検証して作品を配置しました。渋谷の街へ向かっていく方向には、ストリートの要素を持ち込む作品が見える様になっていて、訪れる人たちの気持ちの変化も作れればと考えました。

 

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吉田:

今回は、パブリックアートというジャンルでプロジェクトにご参加いただきましたが、Embedded Blueさんは、どの様な活動をメインでされているのでしょうか。

 

片岡さん:
軸としては、企業の芸術活動の支援と公共空間づくりです。現在手掛けているプロジェクトは全て「小さな芸術祭」だと思っています。地域とともにアーティストが共創したり、人や産業を呼んできたりもします。それをより大きな規模で行えることを目指しています。作品があるだけ、アーティストがいるだけではなくて、アートと社会を繋ぐ役割として存在するプロジェクトをデザインしています。今回のプロジェクトは、企業の芸術活動の支援という視点でも、公共空間という視点でも有意義な活動だったと感じています。

 

吉田:

そう言っていただけるのは、私たちとしてもとても嬉しいことです。街の再開発は、より便利で、安全安心な街に、整えて、築いていくことですが、そこにアートが加わることでより街に面白みや新たな視点が生まれると思います。渋谷という街が、面白い街であり続けられるヒントがアートにはありますね。

 

片岡さん:
渋谷という街には思い入れがありますし、とても好きな街です。街にアートがある景色が当たり前となって、今、渋谷を訪れる若者たちの記憶に残っていくことで、アートとの距離感や、街の捉え方や印象も変わっていくと思っています。今回のプロジェクトが、この街の新たな未来や新たな価値観との出会いのきっかけに繋がるのであれば、それは嬉しいですね。

 

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