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2024.02.28

『しぶやをつくるゼミ』について語る〜NPO法人シブヤ大学 深澤さん・青山学院大学 竹田さんを迎えて〜

『しぶやをつくるゼミ』について語る〜NPO法人シブヤ大学 深澤さん・青山学院大学 竹田さんを迎えて〜

渋谷駅前エリアマネジメント 齋藤(左)

NPO法人シブヤ大学 深澤さん(中央)

青山学院大学国際マネジメント研究科 竹田さん(右)

 

撮影場所:co-ba EBISU

 

 

NPO法人シブヤ大学

事務局(理事) 深澤 まどかさん

 

青山学院大学国際マネジメント研究科

助手 竹田 琢さん

 

 

2021年からスタートしたNPO法人シブヤ大学(以下、シブヤ大学)と渋谷駅前エリアマネジメント(以下、渋谷エリマネ)の協同プロジェクト「しぶやをつくるゼミ」。​

今回のコラムでは、シブヤ大学の深澤さんと、青山学院大学の竹田さんを迎えて「しぶやをつくるゼミ」についてお話を伺いました。

 

 

渋谷エリマネ 齋藤(以下、齋藤):

「しぶやをつくるゼミ」が始まったきっかけや経緯を教えてください。

 

シブヤ大学 深澤さん(以下、深澤さん):

渋谷エリマネさんの「渋谷に住む人や訪れる人たち、まちづくりに馴染みがない人たちの声を取り入れていくためにはどうしたらよいか」という思いからスタートしました。シブヤ大学は日頃から幅広いテーマで多世代に向けて学びの場作りをしている組織なので、その強みを生かしながらできた場が「しぶやをつくるゼミ」です。

 

実は私自身も、公共のまちづくりやルールづくりに対して、あまりなじみがなかったのですが、渋谷エリマネさんと出会って会話を重ねていく中で、表には見えづらいけれど、公共的な観点からまちをより良くしていくために必要な取り組みをされている団体だと知りました。

「渋谷」は再開発も進んでいますし、一見すると私たちがまちに関わる余白なんて無く見えます。そんな渋谷で、まちについて自由に意見を交わせる場所となる余白をつくりたいという渋谷エリマネさんの思いに共感して、一緒に企画づくりを始めました。

 

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齋藤:

今年からチームに参加してくださっている竹田さんから見て「しぶやをつくるゼミ」はどのように見えていますか。

 

青山学院大学 竹田さん(以下、竹田さん):

専門は認知科学という分野で、普段はワークショップやグループワークなどの学びの場で人がどんなコミュニケーションをとりながら学んでいくのかに関する研究をしています。「しぶやをつくるゼミ」には、元々学生時代の友人である深澤さんから「ワークショップ(ゼミのプログラム)のデザインを手伝って欲しい!」と声をかけてもらって参画しました。

 

ゼミの運営に参画して、まずは運営の中心メンバーであるお二人がフラットに議論をしていることが印象的でした。お二人は、純粋に参加者がどうすれば歩きたくなる街を探究できるのか?どんなサポートが必要なのか?といった、学習者の立場に立ってゼミを設計されていました。自分の研究や実践でも、学習者視点に立った教育プログラムの開発は非常に大事にしていることの一つだったので、すぐにチームに溶け込めました。運営メンバーも様々な所属先の人で組織されているのですが、大事にしたいコンセプトを共有できているので、毎回のゼミのミーティングや振り返り会は白熱しながら、良いゼミの環境を作ることを追求できています。

 

齋藤:

2021年の第1期に始まり、今年は3期となります。今期のゼミの特徴や狙いについて教えてください。

 

深澤さん:

今期は、会議室の中だけで話すのではなく、できるだけまちに出ることを意識してプログラムを設定しています。まちに出て体験することで、ネットで調べるだけでは得られない新しい気づきやアイデアが実際に生まれてきています。

また、今期も10代の学生から50代までの幅広い世代が参加してくださっていますが、渋谷が好きな人やまちづくりへの関心がもともと高い人だけではありません。半年間のプログラムに対して、参加者が高い熱量をもって参加してくれているのは、継続する楽しさや、チームで活動する楽しさを感じてくれているのだと思います。

 

齋藤:

まちに出ていくというスタンスは今期の「歩きたくなるまち・通りとは」というテーマにもぴったりですよね。初回のオリエンテーションでは参加者の皆さんと渋谷のまち歩きをしましたが、常日頃まちづくりを考えている私たちもハッとするような視点がたくさん示されました。このゼミの良さである自由さを失わないようなテーマ設定のために議論を重ねた甲斐があったと思っています。

深澤さんや竹田さんは今期のゼミの中で印象に残っているエピソードはありますか?

 

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深澤さん:

「曲がった先にどんな光景が広がっているか予想できないのが面白い」という理由から、「曲がり角」について着目しているチームがあります。そのチームの中では、手間がかかったり面倒くさいと思える要素こそが、歩きたくなる=価値になっている。必ずしも、わかりやすく、迷わず、清潔な通りだけが正解じゃないんだと改めて教えてもらい、そんな自由な発想が面白いなと思います。

 

竹田さん:

ゼミでは参加者の方に同意を得た上で、研究のためのデータも収集させてもらっていて、ゼミの話し合いの書き起こしを作成して分析を行っています。

ゼミでは所属や年代、性別もバラバラの3人〜5人程度のグループごとに探究活動を行っているのですが、参加者の方の発話量に偏りがないことが面白いと思いました。年代も性別もバラバラの3人〜5人程度のグループごとに探究活動を行っているのですが、例えば50代と大学生2人だけのチームの発話量のデータを見ても、どのメンバーも発話量がほとんど均一でした。今回のゼミのようにまちづくり系のワークショップだと、年齢の高い参加者ほど発話量が多くなる傾向があるのですが、このゼミではそういった偏りがないことから、参加者の間で関係をうまく構築しながら活動できているのではないかと思っています。

 

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齋藤:

そうですよね。私は、まちづくりは、自分のテリトリーだけではなく、少し広い視点で周りのことまで見て、考えることだと思っています。このゼミの中で、その視点をゼミ生も学んでくれている気がしますよね。

最後に、おふたりが考えるしぶやをつくるゼミの面白さや、今後の展望について教えてください。

 

竹田さん:

このゼミ自体が、多様な人たちの集まりで、普段合わない人とディスカッションする機会になっていると思います。本来、背景が異なる初対面の参加者同士で、限られた期間内に一つのアウトプットを作成するというのは結構難しい課題であるはずです。ゼミの難しい課題に対して普段関わらない他者とコミュニケーションをとりながら参加者がどんなふうに学習し、価値観が変容していくのかについても興味があります。

 

深澤さん:

私は個人が自由に考えたアイデアや思いが、実際のまちづくり活動に反映されていく可能性があること、しかも渋谷でその余白を設けていること自体が面白いなと思っています。東京・渋谷という大都市では、普通に考えると一人の声は埋もれてしまいがちです。そんな場所で、個人の思いが表現され、他者と重ねられる場があることは、とても大事なことなんじゃないかなと個人的には思います。

今後は「しぶやをつくるゼミ」が個人と公共をつないでいく存在として育っていくことを目指して、卒業生や新たな参加者、様々な関係者の皆さんと、より良い活動のあり方を一緒に考えていきたいと思います。

 

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