一般社団法人国土技術研究センター 佐々木さん(左)と渋谷駅前エリアマネジメント 吉田(右)
撮影協力:渋谷ストリーム
撮影場所:渋谷ストリーム前 稲荷橋広場・金王橋広場
一般社団法人国土技術研究センター
都市・住宅・地域政策グループ 首席研究員 佐々木 正さん
渋谷駅前エリアマネジメント(以下、渋谷エリマネ)発足当時から、多岐に渡りさまざまなアドバイスを下さっている一般社団法人国土技術研究センター(以下、国土技術センター)の佐々木さんをお招きして、公共空間としての道の活用や都市利便増進協定についてお話を伺いました。
渋谷エリマネ 吉田(以下、吉田):
佐々木さんは2015年から渋谷駅前エリアマネジメントに携わってくださっておりますが、渋谷駅前の道路活用はどのようにスタートしたのでしょうか? アドバイスいただいている立場からどのように見えていたか、教えていただきたいです。
国土技術センター 佐々木さん(以下、佐々木さん):
まず、初めに「エリアマネジメントで何をするのか」「課題は何か」から考え始めましたよね。
街を訪れる人がゴミを見て嫌な思いをしないように渋谷駅周辺を変えていきたいというところからスタートしていると思います。
海外の方から見ると「日本の道はゴミがなくて美しい」という印象があると思いますが、それは街の人たちの努力が大半です。それもお役所頼りではなく、自分たちで街を綺麗にしよう!というその街の人たちの思いであって、エリアマネジメントという仕組みが始まる前からそこに備わっていたものだと思います。
渋谷駅前エリアマネジメントが発足した当初は、道路空間に対する考え方も変わってきた時でもありました。道路は車が通るためだけの空間ではなく、人が歩く場所でもあり、人が使う空間である。人が歩くことで街の賑わいにもなり、街の印象を作ることにも繋がる、「道路空間は人が使う空間である」という意識へと変わり始めた時代に、法律的な支援も手厚くなってきた。ちょうどそんな時だったと思います。
吉田:
駅前の道路活用をしながら空間をきれいにするという取り組みは今も続いていますね。そういう意味では、渋谷駅前エリアマネジメントもまだ全ての課題を解決はできているわけではないのですが、今後進めるにあたり、目標や見本にした方が良い団体や自治体はありますか?
佐々木さん:
どこの自治体もそれぞれ困っていて、課題を上げれば、キリがないですよね。
最初は課題に向けて意気込んで活動を始めるわけですが、時代や社会も変化し、メンバーも入れ替わり、収入源も安定しないので、活動がどんどん小さくなっていくというところも残念ながら少なくありません。一番難しいのは、安定的に持続する仕組みを作るということです。
その中で、渋谷駅前エリアマネジメントが頑張っていると思うのは、カフェや広告などの安定的な収入源があって、それをまちづくりに還元していく仕組みをきちんと整えていて、また、行政とも協定を通じて話し合いを続けていく仕組みを用意することができたということだと思います。
吉田:
確かに、全国のエリアマネジメント団体と話す中でも、活動の持続性が課題になるという話は聞きます。渋谷駅前の場合、活動を継続していくためにも重要だったのは、「都市利便増進協定」だということですよね。
渋谷駅前エリアマネジメントにおける「都市利便増進協定」の役割についてはどのようにお考えですか?
佐々木さん:
都市利便増進協定は、広場や道路にある看板やベンチ、街灯などをまちの賑わいづくりや交流などに活用する際、地権者さんや住民団体などの地元の方々が自主的に協定を結んで、街の魅力を高める活動を支援する制度です。渋谷駅前のような官民連携活動を継続していくための担保としても「都市利便増進協定」は非常に重要です。
行政と踏み込んだ話し合いを継続していくことが、まちづくりにとっても、多くの課題を改善に繋げるためには大切なことです。
吉田:
渋谷区とは、都市利便増進協定を結ぶことで長期的なまちづくりや道路活用が取り組めるようになったということですね。
一方で、渋谷駅前では渋谷区以外にも関係者がいます。まち一体で道路も活用したイベント等を行う際は様々な関係者との連携が必要ですが、渋谷だからこその困難や難しいところというのはどういうところだと思いますか?
佐々木さん:
道路には、国道・都道・区道と種類があって、それぞれ管轄が異なります。渋谷駅の場合は、国道246号は国土交通省、明治通りは東京都が管理しています。組織が大きくなるほど管理する範囲が広いので、「渋谷」だけで適用できる特例のイベントという単体の見方では許可を判断することはできないことも多いです。国や関東エリア、あるいは東京都全体のバランスを見て、渋谷の道路で許可できることとできないことを判断するのは、行政の道路管理者にとっても難しいことです。
さらに、渋谷特有の困難でいうと道路管理だけでなく、交通管理(警察)もとても難しいです(交通管理は車だけではなく、歩行者の通行も含みます)。渋谷は世界的に見ても注目度の高い街です。だからこそ、何かイベント等をやるためにはそこに参加する人も、街のみんなも全ての人が安心して参加でき、安全であることは絶対です。
渋谷駅前エリアマネジメントの皆さんは、街の皆さんの代表として街の魅力を高めるための活動やイベントを実施するにあたり、警察や道路管理者の人たちと、何度も話し合いや協議を重ねているわけです。
魅力的なまちづくりと、安心安全なまちづくりにはこのような関係者連携が欠かせません。
今後も、世界的に注目度の高い渋谷だからこそ、安心安全で且つ魅力的なまちづくりをぜひ、渋谷駅前エリアマネジメントの皆さまには推進していただきたいと願って、期待しています。
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「エリアマネジメントによる公共空間の利活用の成果と今後の展望」佐々木 正 首席研究員_(一財)国土技術研究センター 第36回技術研究発表会
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